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Column06

【コンパスポイント】

  • ダイチ
  • カズ
  • シンタ
  • クワナ
  • みな、25歳前後 

 

15世紀後半。

ヴァス・コ・ダガマ

バルトロメウ・ディアス

マゼラン

コロンブス

アメリゴ・ベスプッチ

ルネサンス時代のヨーロッパ。

羅針盤の伝達によって航海がしやすくなったこと、
絶対的な国王による命令、
また交易による莫大な利益、

これらを背景に、
ヨーロッパからアフリカ・アジア・アメリカに船で渡ろうとした男たちがいた。

と、
世界史の授業で習った。

高校生だった僕は、そういうことか、と
高校の先生教わったとおり、
彼らの覚えにくい名前を何度も連呼して暗記し、
また、それ以上に重要だという時代背景を理解した。

あらためて、この時代のことを思い出させてくれた人たちがいる。
そして、改めて考えた。

この人たちの覚悟は、とんでもないものだったに違いない。

当時、 船の上の限られた空間では、疫病や事故により多くの人が命を落としたと言われている。
生きて戻ってきた人は約20%しかいないと言われていた中、
たとえ命令であったとしても、見えない土地を目指して、自分の故郷を離れるのは
そう簡単ではなかったはずだ。

 

「コンパスポイント」

東京の不動前駅から歩いて10分にある家でシェアをする4人は

彼らはそれぞれ仕事を持ちながら、
「コンパスポイント」という団体を運営している。

コンパスポイントとは、コンパスの中心のことを意味する。
自分がどこに向かうのか、
それを考える上でもっとも重要な、いまの自分の居場所を示す。

コンパスポイント。

彼らはこの活動を通じて、
特に若い人が、信念を持って自分の信じる道を進むために、
もっとも大事な信念を明確に持とう、という働きかけをしている。

がむしゃらに、
求めるものを見つけ出す信念。

彼らにとって、
この家がコンパスポイント。

自分にとって、何が大事なのかを忘れないため、
大事なものを見つけるための

仲間。 場所。 思い。 日常生活。

しかし、
彼らの家には、何かが足りない。

いや、何かが余分なのか。

いずれにせよ、何か違和感がするのだ。

 

月間MVP制度

彼らは、大学時代、同じラクロス部で4年間の時をともに過ごした。
目標をともにし、毎日の時間を一緒に過ごした仲は、
間違いなく、「特別な関係」である。

それぞれ、卒業してから別の会社で働き始めた。
そして2年と少し経ち、一緒に住み始めた。

「もともとは、カズとシンタとオレ(クワナ)の3人で住もうと思っていたんですよ。
 仕事場が3人とも大手町だったこともあり。
 そういう話をしていたら、ダイチがオレも入りたい、ってことになり。
 4人で部屋を探し始めました。」

シェアは始まって、
まだ1ヶ月。

4LDKの一軒家。3階建て。
1階の玄関を入ると、たくさんのラクロスグッズが目に入る。

まだラクロスしてるか聞くと、

「もうずいぶんラクロスしていないですね」とみな口をそろえた。

1階と3階には、それぞれのプライベートの部屋が2部屋ずつある。
よく整理され、モノも必要最低限しかない。

「1階の2人は彼女がいなくて、3階の2人は彼女がいるんです。
 天国と地獄と呼ばれています笑」

「家賃は広さに応じて、すこし差をつけているんですけど、
 また定期的に話し合おうという話はしてます。
 別の部屋のほうがいい、ってこともあると思うので。」

2階にはリビングとダイニングと風呂。
風呂の隣には、なんとサウナが。
サウナの扉を開けると、中は扇風機など収納部屋になっている。
たしかに、このサウナは残念ながら狭くて怖い。

「サウナはさすがに怖くて、使ったことないです笑」

リビングとダイニングはつながっており、
ソファと、ダイニングテーブルが置かれている。
目につくのは、リビングのテレビの横と、
ダイニングテーブルの横にある本棚の側面にびっしり張られているポストイット。

そこには、
シェアをしていくうえでの教訓が書かれている。
それをいくつか紹介しよう。

教訓1:問題が起きたら、性善説にたち、誠意を持って話し合う

教訓2:気になったことは、遠慮がちに言う。

教訓3:“ありがとう”を言う

教訓4:細かい『貢献』を積み重ねる

など。

お互いの気持ちよい空気を保つために、
お互いの大事な価値観を言葉にする。

彼らのシェアの工夫。

その象徴として、彼ら独自の制度がある。
それは、
月間MVP制度。

「その月に、このシェアのために最も貢献した人に送られるんです。
 トロフィーもあって、プレゼントとともに送られるんです」

3月の受賞はカズ。
プレゼントは、コンパスだった。

「もらったときに、ベロベロに酔っ払ってたので、
 そのままなくしそうになりました笑」

この部屋で一番目立つ場所、
ダイニングテーブルの隣の棚に、そのトロフィーは輝いている。

彼らは、
彼らの共有している価値観を文字にするだけではなく、形にもしている。
それは、シェアを心地よいするための工夫だ。

 

仲間であり、ライバル

彼らの価値観が形になるのは、
彼らがそれに慣れているからだと分かったのは、
それぞれの部屋を見学させてもらったからだ。

部屋には、
それぞれのラクロスグッズが置かれている。

ラクロスの試合中の写真。
メッセージに埋め尽くされたユニフォーム。
大学時代のポスター。
アメリカで買ったお土産。

ほとんど「偶然」に出会ったラクロスというスポーツで、
ほとんど「偶然」に出会った仲間たちが、
熱い思いと目標を共有し、
ともに時間を過ごし、

ラクロスを卒業してからも一緒に時間を過ごす。

「僕らは、大学のときから仲間であり、かつライバルだったんですよ。」

この言葉が、とても印象的だった。

「社会人になってからも、
 やっぱり仲間であると同時に、ライバルでもある。
 他のやつが、早く起きて7時に家を出て会社で勉強するのであれば
 オレは6時半に家を出るようにしているんです。」

「朝は一緒に行くことはほとんどないんですけど、
 一度だけ、みんな朝の電車が一緒になったことがあるんです。
 そのときは、みんな話すのではなく、
 それぞれが新聞を読んでました。
 なんとなく、そういうこともあって、わざと少し家を出るのをずらしたりしています。」

ただの仲良しではない。
お互いが刺激しあい、高めあい。

仲間であり、ライバル。

それが彼らの成長の原動力となっている。

彼らは、思いでつながっている。
その象徴的なひとつの出来事を教えてもらった。

「土曜日のコンパスポイントの集まりの打ち合わせをしようと
 みんなの予定を調整したんですよ。
 結局、みんなの予定がついたのが 水曜日の夜1時半から。」

「しかも、結局1人は帰ってこれず、
 逆に一人は先に帰ってきてたのに寝てしまっていて。
 それで、喧嘩になった。
 『お前はどうしたいんだ』って笑」

「そこから、朝方まで話し合いでした。
 それぞれ、今後の人生どうしていきたいんだ、
 コンパスポイントをどうしていきたいんだ、と。
 結局最後は、
 『お前らと一緒だからがんばろうと思う』、
 『お前らと一緒だから住める』っていうのを確認しあって。
 暑苦しいですよね笑」

お前と一緒だからできる。

もしかしたら、
多くの人が口にできなくて困っている言葉なのかもしれない。

彼らは、
大事なものを
大事にするコツを、ラクロスを通じて学んだのだろう。

どんなに本を読んでも、
どんなに先生から教えてもらっても、

簡単には得ることができない、
日々少しずつ積み重なっていく大事なもの。
もしかしたら、
彼らが持っている、思いを形にする、思いを言葉にすることが、
もっと世の中に広まれば、
世界は少し、変わるのかもしれない。

 

彼らの将来

彼らがやりたいことには、必ずといっていいほど、「社会」という言葉がつく。

こんな社会にしたい。
あんな社会にしたい。

なぜ「社会」なのか。
なぜ「自分」じゃないのか。
なぜ、彼らの情熱は、社会に向くのか。

「それもいろいろ話し合ったんですけど、
 その、『なぜ』を追求することに意味がないと思ったんです。
 自分のためだけに動くよりも、
 社会のためにも働けるようになりたいと、俺らはみな思っている。
 それでいいんじゃないかって。」

15世紀後半。

ヴァス・コ・ダガマも、

バルトロメウ・ディアスも、

マゼランも、

コロンブスも、

アメリゴ・ベスプッチも、

もしかしたら、 時代背景など関係なかったのかもしれない。

彼らは、
まだ見ぬ遠い土地へ向かうのに、
『なぜ』は考えなかったのではないか。

彼らは
住み始めて1ヶ月。

彼らの家に
足りないもの、余っているもの。
それが少し分かった気がする

ラクロスという偶然によって生まれた特別な関係。
その次のステージであるコンパスポイント。

住み始めて1ヶ月。

大事なものは、ゆっくりつくられていくのだろう。