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Column03

【“NRK”奈落の家 】

  • アンディー 26才  
  • マサ  23才  
  • シロ  23才  

【「平日はだいたい3人なんですけど、 休日は5,6人ですね。」】

この家に住む アンディーに、「何人でシェアしてるんですか?」と聞いたところ、
このような返事が返ってきた。

平日は約3人? 休日は5、6人? 

そう。 この家はたまり場になっている。 
この家に集まる人は、 この家を "NRK" と呼んでいる。
そういえば、 玄関の正面には NRKという文字が掲げられている。 さて、何のことか。

「奈落の略です(笑)。 シェアし始めたころに、家によく来てた女の子が、この家を奈落って呼び始めたんです。」

奈落とは、
"仏教における地獄を意味するSkt:Naraka(ナラカ)を音写した奈落のこと。 また地獄に落ちることをいう。"
(引用元:Wikipedia)

 

【いざ、NRKへ】

お邪魔した日は 雲が一つとしてない晴天。 
待ち合わせ場所に迎えに来てくれたアンディーの笑顔も 同じくらい天晴。

最寄駅の 高輪台駅から歩いて約3分だが、 その道のりは普通でない。
人が2人しか並んであるけないほど狭い下り坂を歩く。 気を抜くと転がってしまいそうな坂。
実際、 宅配便の配送の人が、 大きな荷物に押されて、 転げ落ちそうになっていた。 

そのような道を何度も曲がる。 通りに面した家も、 なぜかやたらと古風だ。
庭に池があり、鯉が泳ぐ。 その上には大きなクモの巣。 熟れすぎて落ちた一面の柿。 
近くを走る 大きな桜田通りとは あまりに対照的な道。 
それらを通り過ぎ、 日のあたらない一角に入ったころ、 突き当たりに見えた家。

その家こそが NRKの家。

家に入ると、 出迎えてくれたのは5人。
なるほど、今日は日曜日。 平日より多い日だ。

それまでの暗い道とは 対象的に 内装はキレイだった。
築30年の2階建てで 家賃は月16.5万円。 1人、1ヶ月に5万5千円を払う。
五反田からも徒歩12,3分ほどの立地で この値段は安い。 たとえ道のりが急な下り坂だとしても。

その理由は、2階には2部屋しかないことだ。6畳の部屋はマサが住み、大きなL字の部屋にはシロが住む。
アンディーは普段は1階のリビングで寝ている。

「物件は、実際に五反田の近くの不動産屋をフラフラして見つけました。」

彼らは 五反田に住む理由があった。

 

【10,000人アンケート。彼らがシェアハウスを始めた理由。】

アンディー、マサ、シロ。 3人が出会ったきっかけは、 同じ会社の内定者だったからだ。
その会社が 五反田にあった。
彼らは社会人以上に 夢中に仕事をする大学生だった。

「内定した後、 会社から課題が与えられたんです。
その内容が、"会社を一つ作ってやるから、好きなことをやってみろ!" というものでした。
もう"さすがに何かやらなきゃいけないっぽいな。。" っていう風になって 始めたんです。」

アンディーは、高校を卒業してから消防士になった。 2年間、消防士として働いた。
それから筑波大に入学。 トライアスロンの選手として、有名コーチの下で本気で泳ぎ、走った。

「しばらくやってみて、自分の成長スピードが落ちていったのを実感したんです。
 おそらくこの道では頂点にたどり着くことはできない。だからすぐ方向転換をしました。」

現在 アンディー26歳、 マサ23歳、 シロ23歳。 
マサとシロは アンディーに対しては敬語で話す。

入社するまでの課題に対し、 10,000人アンケートを実施、 それを披露するためのイベントを企画することになる。
街角で話かけた人に 「あなたの夢を ホワイトボードに書いてください」 と老若男女に尋ねて歩いた。

活動を始めて しばらく経ってから マサが言った。 
「一緒に住んで作業したほうが 早くないっすか?」 そうして このNRKに 3人が集うことになった。

 

【男三人がすむといふこと=仲良し?】

彼らはとりわけ、 仲がいいわけではないと言う。
休日もバラバラのようだ。

「特に、シロはどんな生活をしてるか謎なんですよ。 あいつだけ友達とか連れてきたことないし。
 土日も 実家に帰ってしまって いないことも多いし。」

シロは 訪問した当日も お茶会のため不在。 (ギリギリ会って、写真だけは撮らせてもらえたけれど。)
アンディーとマサは 住み始めてから 何度か喧嘩をしてきた。

NRKに一番最初に荷物を運び込んだ アンディーは、 
自分の荷物をリビングに置いたまま すぐに北海道旅行に出かけてしまった。
次いで 入居したマサ。 自分の荷物を部屋に運び入れたものの、 誰もいない大きな家。  すぐ友達を呼んで Partyをした。 

「北海道にいたら、 マサから電話がかかってきたんですよ。
 "ごめん、安藤さん。 ○○(友達)が階段から落ちて、 壁に穴あけちゃった。" って。
   そしたら すぐ後にまたマサからの電話で。
 "ごめん、安藤さん。 ○○(友達)が安藤さんの布団の上で ゲロ吐いた." って笑。」

彼らは、今までのケンカの話を楽しそうに話す。
  リビングで アンディーとマサの間に座る 3人の友達が、 彼らのケンカを笑い話に変えるムードを持っている。

「マサからの電話から数日後に ようやく家に帰りました。
 すると家の前にゴミが散乱してあって、隣の家の人が書いた "ゴミをなんとかしてください、迷惑です。" という貼り紙が。
 それでまず 1キレです。
 家に入って、 壁の穴が見え。 それが予想以上に大きくて それで2キレ。
 リビングを見て3キレ。 僕の布団の上にまだゲロが放置されたままになっていたんですよ笑」

ひどい話も 笑い話に変える力を持つムード。
そのムードが この家の住人の関係を支える力となっているのは、確かだ。

 

【場所が人を創り、人が場所を創る】

数々の この家にまつわる話を喋ってもらい、 インタビューが開始されてから2時間ほどたっても、
その女性は ずっと同じ動作を続けていた。 アンディーの話に うなづき、
マサの話に 笑い、 それでも手元は 一定の動作を保ち続ける。
何か別の意思に動かされているかのように。 彼女は ずっと アイロンを続けていた。

「昨日の夜から 20枚くらいは アイロンかけました。」
というその女性。

誰かの彼女なのかと聞いてみたが、 そうではないのだという。
もしかしたら 誰かのことが好きなのかと こっそり聞いてみても そうではないのだという。 聞くと、 彼女は アイロンだけではなく、 彼らの部屋の掃除や 布団も干している。

「別に、 好きだからやっているだけです。」

人が集まるところには、 その求心力の源がある。
その源は、 たいていの場合、 空間に由来するか、 もしくは 人に由来する。

 

【アンディー】

アンディーは 入社後 数ヶ月して、 退社することを決めた。
入居してから 半年もたたないころのこと。 もともとやりたいと思っていた仕事ができない環境であり、
自分のやりたいことの方向性が決まっていたことが 大きな理由だった。

「辞めると言い出したとき、 家に同期が大勢で来ました。 十数人くらいでしたかね。
 辞めるなんていうな、 なんで辞めるなんていうんだ、 一緒にやって行こうじゃないか、って。」

アンディーは 自分の進退を冷静に決められる男だった。
トライアスロンもそうだった。
自分にとって より価値のある場所がどこなのか、 考え、 判断することができる人だった。

「でも、 同期の中でも マサとシロは 特になにも 言わなかったですね。
 たぶん 日ごろから オレが何を考えているのか 分かっていてくれるからだと思うんですけど。」

 

【家は舞台装置。】

最後に彼らに 「シェアはいつまで続けるつもりか」 聞いた。

すると、
マサが 押入れから 大量の模造紙に 大量の写真が張ってあるモノを持ってきてくれた。

「これが、 内定者だったころに やった成果です。
 すごい楽しかったんですよ。」

そこには 聞いていたとおり、 老若男女 ありとあらゆる人が その瞬間に書いた それぞれの"夢"と、
"夢" を人に紹介するときに見せる 特有の笑顔が ギッシリと詰まっていた。

そしてマサは その中の1つの写真をさして、

「じつは これが 10,000人を達成したときに みんなで撮った写真なんです。
 そして じつはこのとき 僕らは ここにはいないんですけどね。
 写真の貼り付けやら イベントの企画やらで 忙しかったんで。 でもこの写真はとても好きです。」

「とくに シェアをやめるつもりはありません。 2年後でも。 3年後でも。」

奈落とは、
"仏教における地獄を意味するSkt:Naraka(ナラカ)を音写した奈落のこと。 また地獄に落ちることをいう。"
(引用元:Wikipedia)

それには 続きがある。

"これが次第に下記の用語に転用された。
奈落は、ホール・劇場などにおけるの舞台機構の一つ。舞台の真下のスペースや、花道の床下をいう。
回り舞台や迫り出しの装置があり、通路にもなる。
ホールによってはオーケストラピットも兼ねる装置を奈落と呼称する例もある。
この空間が「奈落」と呼ばれるようになったのには、一般的には暗くて深い所に位置するからと言われるが、
一説には華やかな演劇舞台の陰に嫉妬や怨念が潜んでおり、この場所では霊的な現象などを含め、
事故など様々な事象が起こることがあるからともいわれる。" 
(引用元:Wikipedia)

この家の外に、 舞台が広がる。

彼らは この家で 舞台での演出を考え、 出番を控える人たちが準備をし、 出番を終えた人がひと休みする。
彼らの舞台は Actionの声で始まり、 彼ら自身がActorであり、

Actorを支える全ての人が この家に 集まる。