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Column02

【蒼天航路の家 】

  • こういち 27才  学生 建築
  • みきお  27才  会社員 メーカー
  • かくむ  27才  スキッパー 建築
  • いくたろう  26才  会社員 商社

【仲間とシェアをする、 という選択肢が生まれた、 ある渋谷の夜。】

2005年11月 東京都渋谷区。 夜10時をまわったころ男3人は、
いつものように流行のおしゃれなカフェにいた。

こういちは 大学のラグビー部の鞄を持ち、 中には汚れた運動着と教科書。
かくむは おしゃれな革の鞄を持ち、 中には大量の本と書きかけの論文。
みきおは かっちりとしたビジネスバッグを持ち、中には会社のパソコンとたくさんの書類が入っていた。

彼らが話すことは、 決まっていた。

「これからの時代 はたして 何が面白いのか」

彼らは、あらゆる業界の あらゆる話題をお互いに持ち寄って、
週に2回も3回も会って話すのが習慣になっていた。
政治の話、 映画の話、 デザインの話、 宇宙の話、 スポーツの話、 ITの話、 女の話、 女の話、、、

彼らには共通点があった。
それは 人生に迷っていたことだった。

こういちは 大学生だったが、年は25歳。 彼には熱い思いが宿っていた。
誰よりも努力家で 妥協を許さない。 しかし、彼は焦っていた。

「同年代はすでに働き始めている。 そんな中 大部分の情熱をラグビーに注いでいていいのだろうか。」


かくむは社会人まで あと少し。 25歳。
論文を書いて提出をすれば、社会人までのカウントダウンをするだけだ。
しかし、彼は悩んでいた。

「本当にやりたいことでは無いのではないか。 自分にとって この就職は逃げではないのか。」


みきおは社会人2年目。25歳。大きな仕事をさせてもらい、着実に社会人の階段を上っていく。
しかし、彼は絶望していた。

「このままこの会社にいて描く未来は、自分にとってワクワクするものではない。なんとか打開したい。」

誰もが 抱く悩み。

彼らは何度と 話し合った。
こんなこといいな! できたらいいな! あんな夢 こんな夢 いっぱいあった。

しかし、その話し合いから生まれるものは、
ただ迷いの森に引きずり込む妖精の言霊に過ぎない。

つまりただ満足感だけが得られた気になり、人生の現状は何も変わらない。


そんななか 誰かが言い出した。

「これだけ いつも一緒にいるんなら、 一緒に住んだほうが早いんじゃない?」


【ようやく物件を見つける。 長い道のり。】

思いついてからの行動は早かった。
かくむは不動産会社の立ち上げも経験がしたことがある業界通だっただけに、
いい物件の見つけ方に詳しかったのだ。
間取り、 最寄り駅とそこからの徒歩でかかる時間、家賃、
その他の情報から、物件を選別していく。 

すばらしく夢の広がる物件ばかり!
いつものように 3人は渋谷のカフェでかくむが持ってきた大量の不動産情報を見ながら、
「この家のここがいい、 この家だったらオレはこの部屋がいい」
まるで文化祭/学園祭の準備をしているかのように、 とても夢のあふれる楽しい時間だった。


しかし後日かくむからのメールに驚いた。

実際に 各物件を管理している不動産屋に電話をしてみたところ、
大量の物件のうち、シェアが可能な物件は 1つも無いというのだ。


まったくの誤算。 業界通の彼も まさかと思った。

断られる理由は、 大きくわけて3つ

「大家さんが 騒音などを気にしていらっしゃいまして。。」
「大家さんが トラブルが起こるのを、 気にしていまして。。」
「大家さんが ダメの一点張りでして。。(理由なし)」

それほど 東京でシェアをするのは ハードルが高いのか。
かくむは作戦を変更し、シェアが可能な物件の紹介をしてくれ、と
不動産屋さんを渡りあるくことになった。

その結果、シェア可能な物件は見つかったが、あまり物件として魅力がない。

彼ら3人はわがままだった。
・共有スペースが広いほうがいい、
・渋谷から近いほうがいい、
・一軒家がいい、
・庭があったほうがいい、
・駐車場もついていたほうがいい、、、
要求ばかりは多く、かくむは困っていた。

シェア可能な物件でそんな要求を満たせるモノは見つからない。

約2ヶ月、フラフラ歩いて ようやく見つけた1件の物件。
渋谷からも近く、 駐車場がついていて、 一軒家。 そして何よりも安い。

かくむからの連絡を受け、こういちは一緒に内見に行く。
築30年とは思えないほど綺麗な内装に満足した。
みきおは かくむとこういちから、 物件の感想を聞き、 物件も見ずにGo!を出した。

しかし、偶然にも大家さんのもとには、 同じくシェアを申し出る人たちがいた。
近くの大学に通う学生だった。

それぞれ大家さんと面会をする。 彼らはこうなったら、もうアピールするしかない。

「いい物件ですね!」
「最高にワクワクします!」
「何かお手伝いすることがあったら何でも言ってください!」

結果的に彼らは 学生さんたちに勝ち、その物件を勝ち取ることができた。
あとで 不動産屋に聞いたところ
みきおの会社が大きな企業であり安心感があること、
かくむもまもなく就職すること、という点で決めたようだった。
彼らはそれを聞いて、複雑な気持ちだった。

「もっと シェアが気軽にできるようになったらいいのに。」

そんなことを、
1月分多く敷金を 不動産屋さんに要求されながら、彼らは思ったのだった。


【波乱万丈の同居生活、 only one の同居生活。】

ちょうど春の陽気が 少しずつ差し込むようになったころだった。
もともと 4LDKの物件だったため、1人を誘っていたのだが、
こういちは 前の物件の都合で、 シェアに参加できないことが分かった。

急遽 もう1人を誘った。
こういちは近くに住んでいたため、 暇さえあれば その家に入り浸るようになった。

共同生活が始まった。

4人の暮らしは 想像通り、 いや想像以上に楽しいものだった。
決して いわゆる"快適な暮らし" ではない。
男4人がそろえば、 どのような生活になるかは 分かっていた。

トイレにキノコが生えたこともあった。
炊飯器を空けたら、 米が緑色になっていたこともあった。
ビニール袋に入れていた野菜が 気付いたら茶色い水になっていたことも。。

しかし、 彼らはそんなことなど気にせず、 とにかく日々が楽しかった。
毎日メールをやりとりし、
  ・ご飯をつくろうと思いますが 食べますか。
・今 ○○にいますが、 暇なひと来ませんか
・土曜日の夜 レンタカーで○○に行きませんか
平日も休日も一緒に過ごしているうちに、
なぜか彼らの会話は 敬語が増えていった。

彼らはたくさんの話をした。
テレビを見ていて、 思ったことを言い合い、
お互い持っている本を薦めあった。
かくむは 陸上などまったく知らなかった男だったのに、
ロサンゼルスオリンピックでのカールルイスの走りを見るだけで、涙が出るようになった。

お互いの好きなもの、 楽しいと思うもの、 興奮するもの、 いやなこと、 悲しいこと、
たくさんの時間と たくさんの風景、 たくさんのニオイと たくさんの音、
お互いの未来、 将来やりたいこと、

様々な思いをシェアした。


シェアの生活が始まって、 半年が経過したころ、
皆のもとに届いた 一通のメール。

「仕事の都合で 家をでなきゃいけなくなりました。」


彼らは呆然とした。


【家をシェアすることは、人生をシェアすることだ。シェアを世に広めるのだ!】

1人抜けた穴を埋めるようにこういちは 同居生活に参加した。
近くに住んでいて、幾度となく来ていたため、
皆とはまったく違和感無く 溶け込んだ。
しかし、こういちは後で言った。
「正直 後からだと入りにくい部分もあった。 なんか特別な関係な気がして。」
かくむとみきおは 後でそれを聞き、 確かにそうかもしれない、と納得した。
1人が家を抜けるいう連絡を受けたあと、
残ったかくむとみきおともう1人は、 夜中まで なぜ自分達はシェアしているのか。
自分達はシェアすることで 何を得ることができたのか。
それぞれの思いを 夜が明けるまで話し合った。

家を出て行く彼の お別れ会を 大勢のお客さんを呼んで開催し、
翌日の朝、 4人で門の前にたつ。
並んで撮った写真は、 同居して半年になるのに 初めて4人そろった写真だった。

彼らは全員 泣いていた。

声を出して 泣いていた。

日曜日の朝7時。
そんなことがあったと聞いていたこういちは、
同居することが持つ力について 驚かされるとともに、さびしい気持ちも持っていた。

そして こういちとかくむとみきお、そしてもう1人の同居生活が始まった。
こういちは相変わらず 悩みの中で 大学生活を送っていた。
「このままラグビーをしていていいのか」
何度も話し合った。こういちは何がしたいのか、 何を目指しているのか。

日常の会話で繰り返される、こういちの悩み相談。
大きな、 はっきりとしたきっかけがあったわけではなかった。

彼は 同居生活の中で、
大きな刺激を受け、 未来へと走り始めた。
こういちのやりたいこと、
それは シェアを世の中に広めること。

こういちにとって シェアは力の源であり、 判断の基準であり、 なによりも仲間との熱い絆だったのだ。

かくむとみきおは その夢に 賛成した。

そして 家がもっと もっと、 夢と 情熱と 思いやりと 感動にあふれる場になるよう、
こういちとかくむとみきおは 動き始めたのだった。


2005年11月。

渋谷で幾度となく話し合っていたこういちとかくむとみきお。
ただの話し合いだった、 迷いの森へと導く妖精の声は消え、
迷うことなく 彼らは1歩目を踏み出したのだった。

かれらのシェア生活。
そして かれらの夢は どこに向かっていくのだろうか。